肥満が伝染する?

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タイトルが大袈裟だと思われた同級生もいらっしゃると思いますが、アメリカである研究が発表されました。

ハーバード大学の元教授であるニコラス・クリスタキス氏は、アメリカのフレミングハム心臓研究という
世界的に有名な調査のデータを用い、5000人以上の人が持つ、つながりを分析しました。

その結果、驚くべき「肥満の秘密」が明らかになったのです。

・ある人Aが肥満だった場合、約50%の確率でその友達Bは肥満になる。
・Bの友達であるCは、Aと直接関係がなくても20%の確率で肥満になる。
・さらに、Cの友達であるDは、AとBと直接関係がなくても10%の確率で肥満になる。

つまりAと直接知り合いでなくても、友達のB,C,Dはかなりの確率で肥満になるということです。

肥満はつながりを介してどんどんと「伝染」していくのです。

◎ 理由の1つに、肥満の人が近い関係にいると、その人の考えや行動様式に影響されやすいことが挙げられます。
 これをクリスタキス氏は「行動の模倣」と呼びました。

みなさんは、誰かと食事に行った時、その人がモリモリとおいしそうにご飯を食べている姿を見て
ついつい一緒になって食べ過ぎたという経験はありませんか?

人は誰かがとっている行動をどうしても真似してしまうのです。
これは脳科学でも証明されており、ミラーニューロンという脳内の神経細胞が関与しているそうです。
この細胞は、自分が何かの行動をした時だけでなく、自分が体験していなくても他者の行動を見ただけで活性化し
脳内で再現することがわかっているのです。

◎ もう1つの理由は、肥満の友達がいることで、肥満に対する認識や態度が寛容に変化することが考えられます。
 これは「規範の広がり」と呼ばれるものです。

アメリカでは肥満者は非常に多く、米国疾病予防管理センターは、成人の36.5%が肥満に該当すると報告しています。
こういった社会では、肥満が多くの人に自然と受け入れられています。
まして、身近に肥満の友達がいれば、肥満というものを許容しやすくなります。

また、肥満の友達がたくさん食べている状況を見ていると、「この人も食べているし、別に同じように食べても問題ないんじゃないか」
全然運動に関心がない様子を見ていると、「運動なんて別にしなくてもいいんじゃないか」といったように
肥満につながる行動に対してハードルが低くなってしまうのです。

日本よりもアメリカで肥満が多いのが、なんとなく理解できたような気がします。

このように人と人とのつながりが健康に影響を及ぼす事が、世界の多くで研究されるようになってきました。
イギリスで「孤独担当大臣」という今まででは考えられない大臣が創設されたのは、食事、運動、喫煙よりも
人とのつながりが、私たちの健康に影響を与えることが明らかになってきた事を受けての施策でした。

つながりの健康への効果は、運動やダイエットの3倍ともいわれています。

イギリスの研究機関は「孤独が人の肉体的、精神的健康を損なう」と警告
肥満や一日に15本のタバコを喫煙するよりも有害であるとする啓発活動を実施しています。
また、孤独がイギリスの国家経済に与える影響は、年間320億ポンド(約4.9兆円)に上るとして対策を警告しているのです。

同級生のトピックでも運動や食事の事をメインに扱ってきましたが、つながりの方が、はるかに健康効果があったようです。
とくに男性のほうが深刻な孤独の問題を抱えやすいことが研究の結果分かってきています。

孤独を不安に思う気持ちは自分の弱さを認めること。
「男らしさ」という価値観に縛られがちな男性は、孤独を肯定的に受け止めて対処しようとするか
寂しい気持ちを押し殺そうとするケースが多いのだそうです。

仕事をリタイアした男性が急速に衰えるのも、社会とのつながりが薄れて孤独になっているのかもしれません。