白内障
2008年の6月のことでした。
メタボ検診に備えて日夜トレーニングに励んでいた私がいよいよその成果を
数字で確認する公式の場がやってきました。
そう社内の定期健康診断の日です。
ビルの別棟にあるクリニックで私はその日を迎えたのです。
忘れる事のできない6月10日。
勇んで健康診断に臨んだ私は、いきなり体重の計測コーナーでその成果を確認することになりました。
4月からの2か月のトレーニングで昨年より体重が6キロ減。
メタボ検診のコーナーでは胴周りをメジャーで計測。79㎝。
おお!メタボの基準を大きく下回る実績で目標達成!
喜びに浸りながら今回のもう一つの目標の視力検査へ。
昨年に知人が白内障になっていたのでこの1年間、少ないこずかいから月々1600円を自己投資してブルーベリーアイを飲んできたのです。
ブルーベリーに含まれるアントシアニンとかが眼の水晶体に良いとかで私のネットの知識でこの錠剤にかけてきたのです。
そして計測。あれ?あまりよく見えないぞ!と思っていたら裸眼で左目0.2 右目0.6と昨年より悪い数字が告げられました。
特に左は致命的でした。
何か最近左眼は目に靄がかかったようになっていてテニスをやっていても見えにくかったのです。
がっかりしながら次の眼底検査で、衝撃的な通告をされたのです。
左目、白く濁っていますね。白内障の疑いがあります。
眼科で精密検査されたほうが良いですよ!
あまりに唐突な言葉に、メタボ検診で成果を上げて高揚した気分はいつのまにか吹っ飛んでいました。
(あまりにも悔しくて、後日 メーカーのHPに苦情を書き込んでやりました。) 。
打ちひしがれて帰ってきた私は、知人の紹介でお茶の水にある井上眼科に速攻で予約を入れて検査に出向きました。
ああ手術だとしばらくテニスができなくなる。
せっかく苦労して成果の上がっているトレーニングも出来なくなる。
眼科では右に出る病院がないこの総合病院。
第8ラウンジまでもある巨大な施設の入口の第一ラウンジで待っていました。
1時間も待ってようやく担当の先生の第二ラウンジで待機したのち、検査が始まりました。
「やっぱり白内障ですね。左目だけでなく、右目もダメですね!」と予想を上回る悪い結果が言い渡されました。
「手術しないと治らないですかね?」と不安に脅えながら質問すると、先生は「そうですね。
白内障は水晶体が濁る病気で、進行を止める薬はあるが治せる薬はありません。
根本的に治すには手術して人工の水晶体に入れ替えるしかない」とのことでした。
左目はにごりが真ん中に集中していたので見えにくく視力も低下していたのですが
右はちらばっていたので視力が0.6とまだ見えていただけでした。
それから別の日に手術前のいろんな検査があって、手術をしたのは秋も始まろうかという9月上旬でした。
テニスに関しては、手術まではOKですよと先生からお墨付きをいただいていました。
しばらく出来ないと思うと、狂ったようにテニスオフに予約をいれまくって、週末のスケジュールを埋めつくしました。
この時に出会った人たちが今の私の大きな財産になりました。
この出来事が私のトレーニングを継続させる原動力となりました。
体重がまたまた減って10キロ減になりました。
そして最後のオフを大宮第二公園で終えて、1週間後に手術は始りました。
井上眼科の本館には当日手術を受ける患者が20~30人ほど集まっていました。
順番に名前を呼ばれて手術を受ける直前の待合室に5~6人が集められました。
通路を隔てたところに手術室があります。
和紙でできた手術着を着用して、点眼麻酔をしてスタンバイです。
モニターには今手術を受けている人の映像が流れています。
さすがに目を逸らしてしまいました。
同時に3人が手術を受けれる大手術室に数分後、私は横たわっていました。
担当の先生がすぐに終わりますからねと、言葉をかけてもらい手術は始りました。
瞬きを出来なくするために、大きなセロハンテープを目玉に直接張られ、目が閉じられなくなりました。
そしてそのセロハンテープにハサミで切れ目を入れて手術用のハサミとメスを入れる穴を確保します。
麻酔は本当に効いているのかと、不安がよぎりました。
目の前のハサミを見ながら、自分の目がハサミで切られていく。麻酔がされていても想像で痛さを感じてしまうのです。
20分の手術でしたが、すごく長く感じました。
そうして手術は終わりましたが、また来週もするのかと思うと憂鬱な気持ちになってくるのでした。
そんなこんなで2回目の手術も終わり、リハビリを終えて、やっと9月の下旬からテニスに復帰できるようになりました。
目は順調で、パソコンのモニターを買い替えたのかと思うほどクリアーに見えるようになりました。
テニスボールもよく見えるようになり、初めの一歩のスタートが今までとは全然違います。
このとき初めて視力の大切さを実感しました。
ただ一つ、不便なことがありました。夜になって道を歩いていた時のことです。
街灯の光が突然光線銃のように目に飛び込んでくるのです。
次の街灯も同じように飛び込んできます。
初めての経験でびっくりしました。
後日先生に尋ねたら、人工の水晶体の角に光が乱反射してそういう現象が起こるとの事で慣れるしかないと回答がありました。
雨の日に車のフロントガラスに光が二重に映ったりする現象に近い感じです。
それからはシングルスを極めるため、日夜トレーニングと練習に励んでいます。
テニスが五体満足でできる幸せを感じながら。